兵庫県加西市北部の山あいにある宇仁(うに)小学校(同市田谷町)の3年生全10人が、風船に綿の種とメッセージを付けて飛ばしたところ、約40キロ離れたプロ野球オリックスのコーチ田口壮さん(49)=同県西宮市=の自宅の庭に行き着き、同校に返事が届いた。田口さんの現役時代を知らない子どもたちも、父親らから当時の活躍を聞くなどして大喜び。田口さんは、種に添えられていた栽培方法を参考に「チャレンジしてみようと思います」としている。(森 信弘)
【写真】風船に付けて飛ばした綿の種やメッセージ
同校は全校児童62人。環境学習の一環で毎年、3年生が綿を無農薬で化学肥料も使わずに栽培・収穫し、糸を紡いで布を織る体験を行っている。昨年も5月10日(コットンの日)に種をまき、9月下旬に収穫。11月下旬、地域住民らを招いた学校行事で、種や育て方を書いた紙を付けた風船350個を空に放った。
風船を拾った人との交流や環境に優しい綿作りが広がる願いを込め、児童たちは「フワフワのわたができます」「大切に育ててください」といった手書きのメッセージや学校の連絡先も添えた。遠くは奈良や愛知、東京などからも返事が寄せられたという。
オリックスの球団広報によると、田口さんは「児童がどんな気持ちで飛ばしたのかな、と想像した。これも何かの縁ですね」などと話しているという。
田口さんは現役時代、堅守巧打の外野手として活躍。神戸を本拠としていたオリックスでイチロー選手(現・米大リーグマリナーズ)と共に、阪神・淡路大震災が起きた1995年のパ・リーグ優勝、96年の日本一に貢献した。2002年に米大リーグのカージナルスへ移り、06年にワールドシリーズ制覇も経験した。
同校の男児(9)は以前、父が動画投稿サイト「ユーチューブ」で田口さんの動画を見ていたため、大リーグでの活躍も知っていたといい「もっと種をプレゼントしたい」と笑顔。父がオリックスファンの女児(9)は「お父さんから、すごい人やと聞いた」と興奮気味に話した。「『ちゃんと手紙を書くのが田口さんらしいなあ』とお父さんが言っていた」との声も上がった。
田口さんの手紙は額に入れて同校の玄関ロビーに掲示。「いつかみんなに会えることを楽しみにしています」と書かれており、仁尾浩校長(58)は「講演会に招くなど交流ができればうれしい」と期待している。
■田口さんからの手紙
加西市立宇仁小学校三年生の皆さん
こんにちは。
十一月二十三日に空へと舞い上がったワタの種は、二十四日、兵庫県西宮市の我が家の庭にみんなの気持ちと共にやって来ました。
育て方を参考にして、来年の五月にチャレンジしてみようと思います。
私はオリックス・バファローズというプロ野球チームで、コーチをやっています。
いつかみんなに会えることを楽しみにしています。
オリックス・バファローズ背番号81
田口壮